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「職業の中身や雇用の質というものを創っていかなければならない」-大船渡市副市長

 今回、非常に多忙な中、岩手県大船渡市の副市長である角田陽介様より、お話を頂く機会に恵まれました。

 そこで、現在大船渡市内における労働環境や今後その改善にあたり行う必要があると感じること、また、大学生などの就職に関するお話を伺いました。

 少々文章量が多くなってしまいましたが、一地方の行政において重責を担う方が町について考えていることについてお伝えできれば幸いです。 


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 この度は、このような貴重なご機会を頂きありがとうございます。さて、さっそくではございますが、今回は大船渡市の副市長として、現在市内の労働環境にはどのような問題があり、それに対して市の方としてどのような対応ができると考えられるかお話を頂けますと幸いです。

 一口に労働環境といっても様々なことがありますが、長時間労働や給料が安いといったことになりますでしょうか。

 現状、一つ問題として言えるのは、都会と比べて市内は平均所得が低いことが挙げられます。平均所得が低いということは、労働に対する時給ベースも低いということになります。

 ただ時給ベースが低いからと言って、必ずしもいかんというわけではないと考えます。都会は生活コストが高いため、時給だけを比較してこちらの生活が酷いとは言えません。

 また、時給ベースが低いのは何も企業を経営している人が暴利をむさぼり、搾取しているからというわけではなくて、なぜかといえば、都会の企業に比べおしなべて会社としての付加価値があがっていないからです。

企業に入ってくるお金自体が少ない。分配するものがなければ、配れないというわけです。

 そして、企業に入ってくるお金が少なく、個人に入ってくるお金も少ないということは、それに応じて働かなければいけない場面が出るということになります。働く時間が長くなることやきつい労働をしなければいけない場面も出てくるかもしれません。

 そういう意味合いで、本当かどうかは私自身が勤めていたことがないため分かりませんが、和民などのブラック企業と言われる会社における労働面の問題とこちらの問題は違うと思います。確かにきつい環境で仕事をしていらっしゃるかもしれませんが、問題の次元が異なるのではないかと。

 たとえば和民などの場合、会社の規模が大きく、経営層と実際に働いている従業員の距離が遠い、顔の見えない関係です。そういう状況下では、従業員をいわゆる人的資源としてどう活用するかというように扱ってしまうのではないでしょうか。実際のところはやはり分かりません。しかし、大企業だとそういうことが起こるかもしれません。

 対してこちらの場合、経営層と働いている従業員の距離が近い。ある程度お互いに顔が見えます。

 そういった状況では、よっぽど意地の悪い人でない限り、たとえば無理矢理働かせようとか、ボロ雑巾のように搾り取ろうとか、搾取してやろうとか、そういうことは無いと思うんですね。給与面にしても働くことにしても、見方によってはこの地域の経営層は年齢層が上の人が多いですから、若い人との価値観の違いのようなものがあって「私の若い頃はこうやった」みたいなことがあるのかもしれない。

「近頃の若い者は……」という言葉は太古の昔からあったそうなので、やはり経営層からすれば若い人の考え方ともギャップがあるかもしれない。そうなると、若い人からすれば、「なんだこの酷い会社は……」と感じることになるわけです。

 ただ経営層の人は何も若い人をこき使おうとしてやっているのではないと思うんですね。将来のために色々教えてあげようといったことなどが前提にあるわけで、その労働環境面における価値観は間違っているものがあるかもしれない、若干ありがた迷惑なところもあるかもしれない、けれどそこにはある程度の正義があると、私は思っています。

 会社として付加価値が低いから分配が生み出せていないということについては、お客様が市外の人であれば、その人達の価値観なり考え方なりを理解し、それに合わせていくことが大事だということを行政側としても分かっています。そこをちゃんと改善していかないと「給料安いよね」「土日も働かないとね」という状況の改善ができない。

 決して、市民が裕福そうで、楽そうで良いですねとは思わないけれど、現在の労働環境を改善する方法として、労働者側が経営層を追求して「給料増やせ」「土日休み増やせ」と言ったとしても、短期的な意味合いではその通りなのかもしれないけれど、経営層からすれば人も増やせないし、配るものないわけで、だったら労使一体となり、企業全体で付加価値を上げられるよう取り組んでいくことをもう少ししなければいけないと考えます。

 その時、どこをターゲットにしていくかってことですが。

 東京至上主義じゃないけれど、やっぱり東京において進んでいることがたくさんあるわけで、それを取り込んでいかないとならない。もちろん、東京じゃなくても良い。ただ、東京が圧倒的に市場として大きいわけで、そうなると、やはり価値観の全く違う人達を相手にしなければいけない。

 私はずっと都会育ちで、妻が田舎育ちだったために最初こそ驚きは多かったけれど、田舎に対する免疫のようなものがあって、初めて大船渡に来たときもそれほど衝撃は受けませんでした。それでも話してみると、やはり価値観も考え方も違うし、都会だと普通はこうだということが理解されていないと感じます。市内の人達が大船渡市ではこうだけど都会はこうだというように分かっているなら良いんだけど、なんとなく分かっていないように感じるわけです。

 マーケットを市外に求めるならば、やはり市外の方が買いたい物や欲しいサービスを出していかなければならない。そういうことをやっていかないと付加価値は上がっていかない。

 そこで、大船渡市としては、起業支援室による各種支援を提供しているというわけですね。企業の稼ぐ力を上げるための支援をし、そこから労務環境の改善に繋がればということで。

 そうですね。

 都会も……まあ、ブラック企業などの問題があって、それは確かに酷くて……。こちらの労働環境などの問題は、そういった愛の無い世界の話とは違うと思うんですけどね。

 ただ、人間関係にも合う合わないがあるので、仕方ないところもあるにはあって、そういう点でうまくいかないという人もいると思います。

 とはいえ、経営層と労働者の距離が近いことで、ある種の馴れ合いによって生じるサービス残業などもあるように感じます。

 良し悪しは別として、そういうことはどこでもあるにはあると思うんですね。

 なんと言いますか、海外だと労使の関係はドライだと思うんですけど、日本人は日本人的な性格によって労使関係が元々ウェットなんですね。そういったところに、海外……欧米的なドライな労使関係の仕組みが入ってきたところがあって、決してサービス残業せえとか言うんではないんですけど、何事もある程度の遊びってあるわけで、そういうのまで許さないようなギスギスした労使関係というのもどうなのかなとは思いますね。

 たとえばね、上司が仕事終わりに飲みに誘ったりするじゃないですか。命令じゃないんですよ? それが既にパワハラだとか言われると、それはもうね……色々なことが難しくなっている気がしますね。

 それというのも、厳しい人が昔いたもんだから……「なんで来ないんだ」みたいな人がね。それによって常識的に誘っている人まで誘えなくなったみたいな。セクハラなんかも似たようなものなんだと思うけど、酷い人がいると普通の人もダメになってしまうわけです。。

 たとえば、始業時間前の掃除などにしても、毎日朝早く来て掃除しろというわけでないけれど、掃除しろと言ったら「それも業務命令ですか?」ってやりとりになってしまうと、特に経営層と労働者が近い職場だったりすると、それは果たして働きやすい楽しい職場なのかって思いますね。それほど大きな企業でなければ、働く人も経営層と一緒に盛り立てて、企業の形を作り上げていくものだと、僕は思うんです。そうやっていくことで、経営者もちゃんと頑張っている人には処遇するんでしょうし、場合によっては人も増やすんでしょうから、そういう風にしていった方がね……。

大船渡市の場合は若干古い慣行が残っているとは思うけれど、大きな企業じゃない分、皆で一体感というのもあるでしょうから……それはそれで良いんじゃないか、否定するものでもないんじゃないかと思うんです。

 そういったやり方を一種の大船渡スタイルとして伸ばしていけばということでしょうか。

 まあ、ただ、これは分からないけど、恐らくそういうところは釜石も似たようなものじゃないかな。

 そういえば、大船渡市の方でテレワークを進めようってことで、センターを作りまして。

 富士ソフトが、本社機能同様のもののサテライトを置くと言うことにして、現在東京から二人の方が来ています。三月までを実験期間にして、四月から大船渡市の人を何名か雇用して本開始という話でね。たまに東京にも行ったりするのかな。その辺りは、富士ソフトの方針次第だけど。

 個人的には、このような仕事が大船渡市にも増えていく必要があると感じているのですが、どうも市内の人からすると触れ難いところもあるようで……。

 触れ難いというか、よく分からなくて飛び込みにくいっていうね。その辺、PRのやり方などは難しいですよね。

 僕、いつも思っているんですけど、地方には大企業の下請けとか、ワーカーみたいな仕事っていうのが来がちなわけですよ。頭を使わないって言ったら失礼なんだけど、本社機能みたいな割とヘッドクォーター的な機能というか、経営を考える、ある程度の能力や例えば高学歴の人が来たりするような仕事が地方では起き難くて……。

 現在、高校を出て八割程度の人が市外に出るわけです。その内の一割程度が就職、その他は大学や短大、専門学校など何かしらの進学ですね。北里大学がなくなったので、進学では全員が市外に出るわけです。

 そしてそこで勉強します。就活時期になると、やっぱりその地域を起点に就活するんですね。そこで例えば大船渡市に戻ってきたいと思ったとする。大船渡市にはどういう就職先があるんだろうと調べたときに、職場が見つけにくいんです。

「いや僕、大学出たんだけど……どこで働いたら良いですか?」という状況なわけです。

 一方で、そういった人達を求めている会社はあるんです。あるんですよ。

そういう会社を表に出していきたい。

 進学で市外に出ていく層が圧倒的に多い以上、進学した人を戻すということを考えたいわけです。IターンやJターンはそりゃあるかもしれないけど、そこは闇雲にやっていくしかない。だから、Uターンする人が増やせれば良いなと。

 そのためには、なんでも良いから雇用の数を確保すれば良いというのではなく、ヘッドクォーターに近いとか、大学を出た人達が働こうと思える仕事をね。

 待遇の問題はあるかもしれない。ただ都会の待遇に、給料の方で敵わなくても良いかと思うんだけど……働く中身とか、そういうので大学等に進学した人達にとって魅力的な職場を色々創っていかなければならない。

中々上手くはいかないけれど、起業支援などで新しい職場が生まれてくれば、チャンスはできるかもしれない。

 数十年前は圧倒的に高卒が多くて、それより進学する人が少なかった。その時代と今は全く逆転している、世の中も変わってきている。だからそこに対応した形で職業の中身や雇用の質というものを色々と創っていかなければならないんだろうなと。 

 私としては、企業側もそういった人達が大学等で学んできたことや取得した資格といったものをどのように活かせるのか分かっていないところがあるのではないかと感じられるのですが。

 これは、僕も大学を卒業した後で最初に思ったんだけど……。

 大学を卒業して「僕はこの専門でした、この専門を活かした仕事がしたい」みたいなことを言った記憶があるんだけど、いざ一年二年働いてみて気付いたのは、大学の専門とかってあまり意味が無いなと。

そりゃもちろんね、資格等は最初のとっかかりの一つとしては良いんだけど……たとえば大学で四年間勉強したとしても、所詮勉強なわけですよ。こう言ってしまうと真面目に勉強している学生には失礼なんだけど、四年間勉強するということと一年二年給料を頂きながら真面目に仕事するというのとでは、気合の入り方も本気度も責任感も全然違うわけで。専門や必要な知識、能力といったものは、一年二年そうやって働いた方がつくんですわ。

 現実問題として、大学等の専門といったものは一つのとっかかりとしてあるかもしれないけれど、その知識や経験といったものが別に即戦力になるというわけではないわけで。

だからあんまりそういったものにこだわる必要はなくて、寧ろプライベートを含めて色々な経験を積んだり、色々な知人ができたり、私的な環境だったり、人間関係だったり……大学等での数年間というのは高校とは全然違った感覚が得られるわけで、そういったものが総合的に仕事に役立つものだと思うんですね。

 資格について言えば、やっぱり一つの領域でしかなくて、仕事っていうのは例えば文書だけ作っていれば仕事ってわけではないので。もちろんの一つの飾りだったり、道筋の一つだったりはすると思いますけど。

 だから、あんまり専門的に学んできたものだとか、資格だとかを活かせるものとなると、東京や都会のようにたくさんの種類の仕事がある中ならば、どこかニッチなところに入れるかもしれないけど、大船渡市のようなところでそれを求めるのは無理がある。

 それより、例えば現在手作業でやっているような仕事……機械や外国の方のワーカーなども入っている仕事ですね。これは大変失礼な言い方かもしれないけれど、機械はただで働き、外国の方は日本人より安い賃金で働くかもしれない。そういう層に取って代わられる範囲の仕事が中にはあるわけで、こういった仕事はいくら確保したところで五年後十年後になくなってしまうかもしれないわけです。

特に機械と戦うような仕事は、いずれ機械化される可能性がある。ただ、どんどん私達の学歴レベルが上がっているのだとすれば、そういったものはちゃんと置き換えられていって良いと思うんですね。そのときにクリエイティブな仕事だったり、人間だからこそできる柔軟な発想による仕事だったりを表に出していけるように、そういった仕事を確保していく必要があって、市内にどれくらいそういった仕事があるのか可視化していく必要があると思うんですね。

 結構、経営マネジメントのようなものを求めている企業もあるわけですよ。ただ、現状それぞれ一社一社ごとにそういった求人や就職というのはできていないので、これからだと思っています。

本日は、ありがとうございました。

 

プロフィール

角田陽介

大船渡市副市長。東京大学工学部を卒業後、旧建設省入省。国土交通省九州地方整備局建政部 都市・住宅整備課長、同省都市・地域整備局まち づくり推進課都市総合事業推進室課長補佐、同省都市局街路交通施 設課整備室課長補佐などを歴任し、平成24年2月からは復興庁 統括官付併任の職に就いた後、同年4月より現職。

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